第9回:「地産地消で盛岡のかぼちゃは安い」――都市別データが映す地域格差と棚割戦略

ホーム > コラム > 第9回:「地産地消で盛岡のかぼちゃは安い」――都市別データが映す地域格差と棚割戦略
  • 2024年の二人以上世帯の外食支出は関東220,080円が全国最大、東北133,403円が全国最少で1.65倍の差がある。「全国一律の棚割」で地域対応できているかどうかを問い直す根拠として、このデータは極めて重要である。
  • かぼちゃの都市別平均価格は、農業地帯に近い盛岡市(48.52円/100g)が全国平均(50.87円)より安く、産地の中心地・札幌市は53.02円と高い。「地産地消のコスト優位性」と「生産地特有の需要旺盛さ」が都市別データに明確に表れており、地域別の仕入れ戦略立案の根拠となる。
  • 肉類は近畿(111,430円)が全国最大、魚介類は東北(81,554円)が最大と、東西・南北の食文化格差が家計支出データから鮮明に読み取れる。近畿の「牛肉文化」と東北の「魚食文化」は感覚論ではなく、数字で確認できる現実である。

スーパーマーケットが「全国チェーンの標準品揃え」を地域の店舗にそのまま適用することの限界を、家計調査の地方別・都市別データが数字で示しています。外食への年間支出は関東220,080円に対して東北133,403円と1.65倍の差があります。しかし、この格差は単に「都市か地方か」「所得が高いか低いか」という一元的な説明では不十分です。東北の内食・自炊文化の根付きと、関東の通勤時間の長さ・外食産業の集積密度という生活スタイルの違いが、食費の使い方をこれだけ変えているのです。感覚ではなくデータで「自社商圏の特性」を把握することが、MD投資の精度を高める第一歩となります。

都市別データを見ると、同じ品目でも「産地との距離・物流コスト・文化的な消費習慣」によって価格と消費量がどれだけ違うかが分かります。かぼちゃの2025年データを例に取ると、全国平均(50.87円/100g)に対して、北海道の産地中心都市・札幌は53.02円と高めの単価でも4,169g近くを購入しています。一方、農業地帯に近い盛岡市では48.52円/100gと全国平均より安く、これは輸送コストが少なく産地から直接供給される「地産地消のコスト優位性」が反映されたものです。東京都区部は購入数量が少なく、すでにカットされた野菜・惣菜・外食という別の形での野菜摂取が代替しています。「同じ商品でも地域によって仕入れ価格・品揃えの深さ・販売期間が変わる」という基本原則を、都市別データが裏付けています。

肉類と魚介類の地域差は、日本の東西・南北の食文化を端的に映しています。肉類支出は近畿111,430円が全国最大、次いで九州103,572円・中国103,455円と西日本勢が上位に並びます。近畿の「牛肉文化(すき焼き・しゃぶしゃぶ・焼肉への親しみ)」と「粉文化(お好み焼き・たこ焼き)」が家計支出に直接反映されているのです。一方、魚介類は東北81,554円・北海道78,865円・北陸78,769円が上位3地方を占め、沖縄47,091円が全国最少となっています。北日本の「魚食文化の根強さ」と「厳寒期を乗り越えるための栄養確保の知恵」が、魚介類支出の高さとして表れています。

パンと米の地域差も棚割設計に重要な示唆を与えます。パン支出は近畿38,961円(全国平均34,609円の1.13倍)が最大で、大阪・神戸に根付く「喫茶文化(モーニングサービス)」と全国有数の食パン消費量という文化的背景を持ちます。一方、米は沖縄35,068円(全国平均の1.29倍)・北海道33,487円・北陸31,518円が高く、四国24,314円・近畿26,290円が低くなっています。北日本・沖縄の米食文化と、近畿・四国での米消費の少なさという対比は、「同じ穀類売場でも最適な棚割は地域ごとに異なる」ことを数字で示しています。

■コラム一覧

第1回:「入場税廃止」からビッグマック500円まで――デフレ均衡が崩れた37年の価格史
・第2回:「賃金↓→転嫁拒否→賃金↓」――デフレ均衡方程式と5フェーズの時代背景

第3回:「主食の大逆転」が示す――エンゲル係数と食費構造25年の地殻変動
第4回:「タイムパフォーマンス」が惣菜を選ぶ理由とは?――中食化25年と調理時間の機会費用
第5回:単身世帯の平均年齢は58.6歳――「プロテインシフト」と食の個人化の25年
第6回:「カップ麺が相対的に安い」――穀類消費変容と即席麺が選ばれる「機会費用」の論理
第7回:かぼちゃ購入量▲26%が教える――生鮮価格高騰と「適応の2段階」メカニズム
第8回:ミネラルウォーター+23%、焼酎▲15%――健康志向と気候変動が変えた「飲む」という選択
第9回:「地産地消で盛岡のかぼちゃは安い」――都市別データが映す地域格差と棚割戦略
第10回:沖縄はスパムと米、北海道は自炊――「37年の眠りから目覚める」日本の食と持続的成長の条件

どんなお悩みでも、まずはお問い合わせください!

Contact

ニッコンでは、企業規模の大小や業種に関わらず、各社のご要望に合わせた人材育成プランをご提案いたします。
また、教育研修以外の各種コンサルテーションもご支援いたします。
まずはお気軽にお問い合わせください。

電話でのお問い合わせ