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惣菜勝手レポート(1/8)

目次

  1. グローサラント
  2. 中食市場が拡大した理由
  3. 寿司の不思議
  4. 土用丑の日
  5. 汚い惣菜キッチン
  6. 総菜売り場のカラーコントロール
  7. インスタ映え
  8. ネット(宅配)と総菜

1. グローサラント

グローサラント(Grocerant) は、「Grocery(食料雑貨店)」と「Restaurant(レストラン)」を組み合わせた造語で、スーパーマーケットの売場内でその食材を使った料理を提供する飲食スペースを指す。

地元の有名飲食店をスーパーマーケットに誘致する方式もグローサラントと呼ばれるが、特に注目されているのは、スーパーマーケット自身が経営し、売場の食材を調達・活用してレストラン風のメニューを提供するスタイルである。ただし、発想自体はまったく新しいものではない。私がかつて支援していた企業では、すでに店内スタッフが麺類(そば・うどん・ラーメン・丼物など)を調理・提供しており、お客様から一定の支持を得ていた。

難しいのは、グローサラントには飲食店のノウハウが不可欠という点である。

飲食店とスーパーマーケットの違いを整理しよう。まず「人」の問題がある。過去にスーパーマーケットが飲食店出身の調理人を採用して失敗した事例は数多い。スーパーマーケットは本来、大量生産・大量販売が基本であるにもかかわらず、飲食店出身の調理人が一品一品丁寧に手間をかけた結果、商品が売場に出てこず売上につながらない悪循環を招いた。これは調理人に能力がないのではなく、両業態のオペレーションの違いを理解せずに採用した企業側の問題である。

次に粗利益率の問題がある。スーパーマーケットの惣菜部門の粗利益率は 40%前後 で推移しているのに対して、飲食店のそれは 60〜75% に達する。ここで飲食業特有の管理指標であるFLコスト(フード・レイバーコスト=原材料費+人件費) が重要になる。売上に占めるFLコストを常に把握することで営業利益を予測・管理するのが飲食業の基本であり、一般的にFLコストは 60%以内 が理想とされる(企業の経費構造により異なるため参考値として捉えてほしい)。

また、飲食業における顧客満足度の基本フレームワークとして QSC&A がある。Quality(品質)・Service(サービス)・Cleanliness(清潔さ)・Atmosphere(雰囲気)の4要素だが、スーパーマーケットが飲食機能を持とうとするとき、特に Atmosphere(雰囲気) への理解が不足しがちだ。イートインコーナーの延長線上でグローサラントを設計してしまっては必ず失敗する。メニュー構成だけでなく、照明・内装・BGM・動線まで含めた「飲食空間」としての設計が求められ、調理人ではなく飲食業の運営や店舗設計を熟知した人材のアドバイスが不可欠である。

コロナ禍(2020〜2023年)は外食自粛によりグローサラントへの注目がいったん低下したが、その期間に消費者が「家で食べること」に慣れ親しんだことで、中食と外食を融合させる新しいコンセプトが改めて評価されている。成城石井は旗艦店で店内食材を活用したメニューを提供し、料理のレシピも合わせて提示することで「食べる→買う→自宅で作る」という好循環を生み出している。イオンスタイルも一部店舗で売場面積の約30%をイートインスペースに充て、惣菜と連動した「食べられる売場」を実験的に展開している。

ひとつ提案したいことがある。多くの企業でデモキッチンが遊休化している。5〜6席を用意し、旬の食材や新商品を使った有料の「体験型試食プログラム」として活用してみてはどうか。飲食店以下・スーパーマーケット以上の価格帯で本格的な定食を提供しつつ、使用した食材をその場で訴求する仕組みは、他部門との相乗効果も期待できる。遊んでいるデモキッチンを収益化する一石二鳥の施策になり得る。

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