「調査員が心を動かされた、その瞬間」
皆様、こんにちは。私は接客実態調査歴10年の三輪と申します。
このコラムでは私が数多く訪れたお店の中から、特に心が動いた瞬間をご紹介しています。
今回は、チョコレート専門店にて、サインキャッチと商品決定へ導くトークにじんわりと心が満たされたお話です。
その日、私は「仕事で10年ほどお世話になった目上の方が異動するため、感謝を込めて少し良い贈り物をしたい」というニーズで調査に臨んでいました。
商品を見始めると、
「キューブタイプの生チョコレートが一番の代表作になっております」と明るい笑顔でアプローチがあり、「知ってくださってたんですか?」と気さくにコミュニケーションを取るので、高価格帯の商品でも気軽に見やすい雰囲気がつくられています。
通りがかりだと伝えると、嬉しそうな表情で
「香りが強くて、お箱を開けた瞬間、ふわぁっと香りがする生チョコレートなんです」と看板商品について表情豊かに語ります。
その中でもエルダーフラワーのフレーバーに興味を示すと、
「エルダーフラワーをくださる農園さんが本当に凄くて、森のような中で育てるんですけど、お花の香りを楽しんでいただくには一番の商品なので」と、こだわりを感じる説明でぐっと心が惹きつけられました。
「今日はご自身用ですか?」という問いから、贈答用であること、相手は1人であることなど、ニーズを自然に引き出していきます。
さらに「お渡しする時期」を確認し、賞味期限の長さを理由に生チョコレートを提案したうえで、
「渡される方がお1人様だと、イメージに合ったものだったりとか、好みに合わせて選んでいただけるとより特別感が出ると思います」と、さらに贈る相手の好みを探る質問もあり、最適な商品を提案しようという親身な気持ちが伝わってきます。
差し上げる方が美食家のため、
「せっかくなので、他では見ない味が良いかな」と伝えると、
「そうですよね。せっかくなのでっていうお言葉通り、本当にいろんな種類があるので」とこちらの言葉をオウム返しでしっかりと受け止めて、
「湘南ゴールドは優しい甘みと、酸味もそんなにカーン!と最初からくるわけではないんですね。甘ずっぱいピューレの感じ、ちょっとほろ苦い感じも出てくるので、味わいが少しずつ変化していくような」と味の変化まで伝えて柑橘系のフレーバーを紹介したり、
「アセロラは実はスタッフ人気すごく高いんですよ。
私が食べた印象では、最初の1口目はちゃんとしっかりチョコレートの味がして、最後の後味にアセロラの酸味がサッとやってきてくれるみたいなイメージでございます」
と自身の体験と豊かな身振り手振りでの説明で、実際に食べた気分になるような表現力でした。
どれも魅力的で悩んでいると、
「エルダーフラワーも素敵ですよね。気になってくださっていましたし」と一番初めに興味を持っていた商品に戻るので、こちらの気持ちを大切にしてくれているように感じられます。
「特別な方でいらっしゃいますか?」と聞くので、
「仕事で10年くらいはお世話になっている方なんですが、今後はお会いする機会がなくなりそうで…」と話すと、ハッとしたような表情になり、エルダーフラワーのパッケージにある『DEAR』の文字へ注目させ、
「DEARというのが、誰かに贈りたいものというような意味で、春の出会いと別れの季節に選んでいただけるようにお出ししております」とデザインに込められた意味を話します。
「スーッと抜けるような、爽やかで、気持ち良くなるような香りなんです。味もさっぱりとしていて、他には無いお味という意味でも、『DEAR』という言葉が心を込めてお渡しする贈り物という意味でも、凄く合ってると思うので、おすすめです!」と“別れ”を含め、贈る相手と私の関係性に基づいた、完璧なストーリーを添えて後押ししてくれたのです。
魅力的な商品が多く迷っていましたが、この言葉ですんなりと商品を購入することができました。
この販売員さんの素晴らしいところは、こちらの迷いや贈る相手への感情という微弱なサインをキャッチして言葉で確認し、得た情報を余すことなく会話に含めて最後のおすすめにしっかりとつなげた点です。
商品の魅力を伝える表現力もかなり高く、チョコレートの専門店で購入する価値を高め続けていました。大切な方への贈り物を、ぜひまた選んでもらいたいと思える、そんな素敵な接客でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
引き続きご愛読いただけると幸いです。
