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10年後も求められる営業とは ~イノベーションのジレンマを打開する営業職の役割~

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執筆者:原田 明人

イノベーションを起こすのは誰か

近年、AI,IoT,BD,VRなど、情報技術を取り巻く環境は大きく変化しつつあります。そうした環境において、企業は今までの仕事のあり方、戦略のあり方を見直す時期となりました。

しかし、こうしたイノベーションは一朝一夕には起こすことは出来ません。一人ひとりの従業員は、現状の仕事に追われ、目の前の仕事をこなすことが第一の目的となってしまっているからです。

「イノベーションは誰が主軸となって起こしていくのか?」経済産業省が推進する「Innovation100委員会」のレポートでは、イノベーションは一般従業員ではなく、経営者がその役割になっていると考えられています。

しかし、経営者においても現状のビジネスの成功の呪縛は大きく、改革を起こすことは容易ではありません。それは、改革を推進する障害として、「イノベーションのジレンマ」が存在するからだと考えられているからです。

「イノベーションのジレンマ」とは、米ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授が提唱した理論です。

クリステンセン教授は名著『イノベーションのジレンマ』の中で、「ある製品・サービスで一定のシェアを保っている企業(特に大企業)は、シェアを保っている製品を大きく改革することにジレンマを抱えている」と語っています。その企業が抱えるジレンマとは、「製品を大きく改革することで、シェアを落とすのではないか」という考え(思い込み)です。

そのジレンマにより、製品を大きく改革すること阻み、製品の小さな改良に注力してしまいます。そうしているうちに、新興企業の開発した廉価で最低限の機能を搭載した製品にシェアを奪われてしまうのです。

例えば、デジタルカメラにおいて一定のシェアを確保しているA社があったとしましょう。

デジタルカメラが市場に投入されたときには、市場に大きなインパクトを与えデジタルカメラ市場は大きく成長し、A社も販売体制・生産体制を確立していきました。しかし、デジタルカメラの市場は有望であると見た多くの企業が参入し、シェアの取り合いになりました。そうしたシェアの取り合いの中で、A社は高度な技術や機能を搭載した製品を次々に市場に導入していきます。

ところが、シェアのベースを担う一般大衆は、高度な技術や機能を使いこなすことはできず、ハイエンド市場は一部の専門的顧客だけに限定されてきます。そこに、別の業界から、携帯電話の一部にカメラを組み込み、対応する画素数を落とし、機能を限定したモデルをもって市場に参入してきたとします。すると、今まで一定のシェアを確保していたデジタルカメラを販売していたA社のシェアは奪われていってしまいました。

こうしたジレンマを抱える企業が、イノベーションを起こすためには、内部からの改革は難しく、外的要因を動機にしてイノベーションを起こす必要があります。そして、企業の外部から動機を与えられる存在として、営業担当者がいるのではないかと私は考えています。

営業担当者が顧客企業のイノベーションを起こす動機になるということです。

 10年後も求められる営業とは

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数年前、週刊ダイヤモンドに「機械が奪う職業・仕事ランキング」という記事が掲載されました。その記事によると、機械に奪われる職業の第1位が小売店販売員、第2位が会計士、第3位が一般事務員。そして、第4位にランクインしている職業は、セールスマンでした。

営業職はお客様との商談を繰り返すことで企業に売上をもたらす重要な職業です。その営業職が機械に奪われてしまうとは、一体どういうことなのでしょうか。近年、Webによる販売・マーケティング活動が活発に行われており、顧客(特にBtoBビジネス)の購買意思決定はWebの世界で行われることが多くなっています。

例えば、私たちは価格.comの比較サイトで商品を選択したり、Amazonサイトのリコメンデーションによって、購買意欲を掻き立てられて商品を購入したりします。インターネットが顧客の日常にしっかりと根をおろした現代において、物を販売する営業職は、営業としての価値をWeb販売の機能に奪われてしまうであろう、と考えられています。

経済産業省が提示する『成長戦略としての働き方改革と人材育成について(平成29年)』のレポートでは、2030年にはAIの進展によって、ホワイトカラーの仕事の大部分が機械化(システム化)されていくと示されています。そうした視点で見ると、営業の仕事も2030年には機械化されてしまうと考えられます。

しかし、本当に営業の仕事は機械に奪われてしまうのでしょうか。レポートの続きでは、営業職の仕事において、機械に代替される営業職と代替されない営業職に二分される、と推測しています。

機械に代替される営業職の例としては、定型の保険商品の販売員・物売り方の販売員だとされ、代替されない営業職の例としては、カスタマイズされた不定形の保険商品の販売員・コンサルティング機能を有する法人営業担当だとされています。

法人営業担当は、商品をカスタマイズして、お客様の問題解決をサポートするコンサルティングの要素が重要であり、商品そのものの価値と営業担当者の発想力や想像力が組み合わさることで、付加価値を生み出しています。このような付加価値を生み出せる営業職を、私たちは「ソリューション営業」あるいは「イノベーション営業」と呼んでいます。

ソリューション営業は、お客様が抱える問題を自社の商品を使って解決に導くことをする営業です。

イノベーション営業は、お客様が抱える経営課題を、お客様自身に変革を起こさせることで解決に導く営業です。これからの営業職に求められる営業スタイルとは、お客様にまさに営業としての付加価値を提供できる「ソリューション営業」や「イノベーション営業」にあると私は考えます。

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