記事のポイント
- 生鮮各部門は粗利率と加工作業の負荷が大きく異なり、一律の改善ルールを当てはめるとかえって現場の混乱を招きかねない
- 青果部門はアウトパック比率、水産部門は仕込みの集中化と機械化、惣菜部門は出来たて提供と廃棄ロスのバランスが、それぞれ最優先課題として挙げられる
- 部門ごとの人時生産性の目安を単純比較して優劣を判断することには、慎重であるべきだという見方もできる
店舗全体の生産性を高めようとするとき、すべての部門に同じ改善ルールを当てはめてしまうと、かえって現場の混乱を招くことがあります。青果・水産・惣菜という生鮮各部門は、粗利率も加工作業の負荷も大きく異なるためです。
青果部門は粗利率が比較的低いものの高回転で陳列量が多く、袋詰めやカット加工、品出し頻度がボトルネックになりやすくなっています。市場や外部工場でのアウトパック(袋詰め・カット済み商品)比率を高め、店内での加工人時を減らすことが改善の鍵になります。水産部門は粗利率が高い一方、丸魚の加工や刺身盛りなど専門的な調理技術を要するため加工負荷が最も重く、人手不足も他部門より深刻です。仕込み作業を特定の時間帯に集中させ、パック包装やラベル貼りを機械化することで、職人の人時を高度な加工作業に振り向けやすくなります。惣菜部門は揚げ・焼き・炊飯など多様な調理工程を伴う労働集約的な部門であり、出来たて提供の魅力と廃棄ロスのトレードオフをどう調整するかが最大の課題です。曜日別の売上パターンに沿った時間帯別の製造計画を徹底し、陳列頻度をコントロールすることで、廃棄を抑えながら粗利額を確保しやすくなります。なお、水産・惣菜部門の人手不足割合として挙げた数値は2017年時点の調査によるものであり、直近のデータではない点にはご留意ください。もっとも、丸魚加工や刺身盛りに必要な専門技術の担い手を確保する難しさという構造要因自体は、この間大きくは変わっていないとみられ、部門間の傾向を捉える参考値としては今も一定の意味を持っています。
それぞれの部門で人時生産性の目安となる数字が参考として示されることもありますが、これは粗利率の構造が異なる部門同士を並べているという前提を忘れると、誤った比較につながりかねません。
部門別の人時生産性の数字だけを見て「この部門は生産性が低い」と評価するのは、危険な単純化と言わざるを得ません。粗利率が構造的に低い部門は、どれだけ効率化しても人時生産性の絶対値で粗利率の高い部門に届くことはありません。部門間の優劣を論じるのではなく、それぞれの部門が「その部門の粗利率構造の中で、どれだけボトルネックを解消できているか」という相対的な改善度で評価する方が、実態に即しているはずです。
自店で部門別の人時生産性を比較しているとしたら、その比較は各部門の粗利率構造の違いを踏まえたものになっているでしょうか。一度、金額の単純比較ではなく「対前年の改善率」で部門を並べ替えてみると、違った景色が見えてくるはずです。
