記事のポイント
- 来店客数は時間帯・曜日・天候によって大きく変動するため、出勤時間や配置を固定するとピーク時の不足とアイドルタイムの過剰が同時に起きる
- レジ待ち時間が3分(180秒)を超えると離脱率が急上昇するとされ、時間帯別の客数予測に基づくレジ台数の算出が有効とされる
- 客数連動型の人員配置を導入した事例では、レジ待ち時間を維持しながら総労働時間の削減と人時生産性の向上を両立させたと報告されている
食品スーパーの来店客数は、平日と週末、開店直後と夕方、晴れの日と雨の日とで大きく異なります。特に夕方の惣菜売場や給料日直後の週末など、特定のタイミングに客足が集中する店舗も少なくありません。この変動を無視して出勤時間や配置を固定してしまうと、ピーク時には人手が足りずレジ待ちや欠品が発生し、アイドルタイムには逆に手待ちのムダが生まれます。
一般に、レジ待ち時間が3分(180秒)を超えると、買い物を諦めて離脱する顧客の割合が急上昇すると言われています。必要なレジ台数は、時間帯別の予測客数を1時間あたりのレジ処理能力で割ることで、感覚に頼らず機械的に算出できます。レジに限らず、品出しや発注といった他の持ち場についても、時間帯別の想定作業量と標準的な処理能力を掛け合わせれば、必要な人時を同じように割り出せます。この基準をもとに、アイドルタイムには他の作業を、ピーク時には他部門からの応援を計画的に組み込む「マンアワーマネジメント」という考え方があります。ある大手食品スーパーの支援事例では、勘に頼ったシフト配置を客数連動型に切り替えた結果、レジ待ち時間を適正範囲に保ちながら総労働時間を削減し、人時生産性を引き上げたと報告されています。
この手法の本質は、レジの混雑という「目に見える不満」だけに着目するのではなく、店舗全体の人時配分を客数という共通の物差しで組み替える点にあります。裏を返せば、レジの応援体制さえ整えれば人時生産性が上がるというほど単純な話ではなく、レジ以外の作業をどう組み合わせるかまで含めて設計しなければ効果は限定的になります。
レジ待ち3分という「顧客が離脱する瞬間」にばかり目が向きがちですが、その裏で品出しや陳列の作業が後回しになり続けているとすれば、それは統計に表れにくい形で人時生産性を押し下げている可能性があります。特にピーク帯にレジへ人を割く判断は、店舗全体で共有されないまま個人の裁量に委ねられているケースも少なくありません。同じ時間帯でも担当者によって判断が割れることが、日によって生産性がぶれる一因になっているとも考えられます。レジの応援に人を割いた結果、売場の欠品が発生し、翌日以降の客数にまで影響が及んでいるとしたら、見えている問題より見えていない損失の方が大きいのかもしれません。
自店でレジ応援の体制を組むとき、その判断の裏で何を犠牲にしているか——まずは応援に入った時間帯の売場の状態を、後日振り返ってみると、見えていなかった負担に気づけるかもしれません。
