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相手との距離を縮める「相互理解のコミュニケーション」術

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記事作成日:2016年9月30日(金)
執筆者:小松 茂樹

突然ですが、質問です。この中のいずれかに、心当たりはございませんか?

  • 「言った」「言わない」のトラブルが絶えない
  • 上司に指示された仕事を提出したら、「話を聞いていない」 と怒られた
  • 部下に頼んだ仕事が、自分のイメージと違う結果で返ってくる
  • 上司・部下・同僚が何を考えているのかわからない
  • とにかく話が噛み合わず、職場の人間関係が面倒くさい

心当たりのある方は、ぜひ読み進めてみてください。あなたの頭のモヤモヤを吹き飛ばす「手がかり」が何か、見つかるかもしれません。

 頭を悩ます「職場のコミュニケーション」

冒頭に挙げた例は、いずれも職場におけるコミュニケーションのトラブルです。

高度に情報化され、環境変化のスピードが加速し、人々の価値観が多様になった現代のビジネスシーンでは、以前にも増してコミュニケーションの重要性が叫ばれています。

それを裏打ちするかのように、『「コミュニケーション能力」が9年連続で「新入社員に求める能力」の第一位となっている』という調査結果が出ています。

また、コミュニケーションのトラブルは、何も新入社員に限った話ではありません。若手・中堅はもとより上位職の方においても、時に頭の痛い話である、と言えるでしょう。

仕事の「内容」「進め方」「環境」、いずれも日々刻々と複雑さを増しています。こうした状況下ではコミュニケーションの難易度が上がるのも当然の話だと言えます。

私たちは、自分の仕事を円滑に進めるためにも、コミュニケーション能力にさらなる磨きをかけていく必要があるのではないでしょうか。

飲み会はコミュニケーション改善策か?

近年では職場のコミュニケーション改善策として、会社が飲み会を推奨したり支援したりするケースがあります。ブレックファーストミーティング・ランチミーティングと題して、職場のメンバーで食事を共にする機会を設けている例もあるでしょう。あるいは、近年やめていた社内運動会や社内旅行を復活させるといった動きもあるようです。

確かに、飲食を共にしたり、仕事以外の体験を共有したりすることは、人間関係を向上させる「きっかけ」として有効に作用する場合があります。しかし、これらはいずれもコミュニケーションの本質ではありません。コミュニケーションの促進を図るための「イベント」に過ぎないのです。

「コミュニケーションとは何なのか。」それを理解しないままに、ただ食事をしたり運動会や旅行をしたりするだけで、コミュニケーションが改善されることはないでしょう。こうした「イベント」を効果的に活用するためにも、一度コミュニケーションの本質を押さえておく必要があります。

そもそも「コミュニケーション」とは何なのか?

「コミュニケーション」という言葉は外来語です。直訳して置き換えることのできる日本語が存在しません。それもそのはずで、「黙して語らず」「空気を読んで察する」という文化的背景を持つ日本においては、主張文化の米国からやって来た「コミュニケーション」に相当する概念がないのです。

私たちは「コミュニケーション」という言葉を日常的に“なんとなく”使っています。それゆえ、飲み会もコミュニケーション、ランチもコミュニケーション、社員旅行もコミュニケーション、運動会もコミュニケーション・・・ということになってしまうのです。厳密に言えば、これらはあくまで人間関係の向上・改善策であって、コミュニケーションそのものではありません。

明確に定義するならば、コミュニケーションとは、

  • 2人以上の人間が
  • お互いの思考・感情・意思を
  • 言語または非言語のメッセージを通じて
  • 伝達し、交流させる行為 です。

つまり、「自己表現」と「他者理解」を相互に行う、ということです。やや乱暴な言い方をするならば、お互いの人間関係が良好であろうがなかろうが、お互いの言い分を十分に理解し合えていれば『コミュニケーションは成立している』と言えるのです。

私たちは好きな人とだけ仕事をできる、とは限りません。嫌いな人、苦手な人とでも、円滑にコミュニケーションをとることができなければ、業務に致命的な遅延や喪失を招く恐れがあります。

もちろん、人間関係が良好であるに越したことはありません。しかし、今回は、相手との関係性を超えて業務上必要なコミュニケーションを交わす方法について述べていきたいと思います。

会話の3つの種類

私たちが、業務上あるいは私生活において、日常的に交わしている会話には3つの種類があります。

  1. 日常会話
  2. 問題解決会話
  3. 感情移入会話

これらは、会話主の「関心の対象の違い」によって分類されます。各会話の違いをイメージしていただくために、簡単な例を挙げてみましょう。

ある朝、男性が玄関で靴を履き終え、出勤しようとドアを開けました。空を見上げると雲行きが怪しい。雨が降りそうだなぁ とつぶやきます。すると、見送りにきた奥様がこう言いました。

1.日常会話

奥様「あら大変。洗濯物を取り込まなくちゃ」

この場合、奥様の関心の対象は「自分」にあります。会話による相手への影響はあまりない状態です。

あるいは、関心の対象が自分にも相手にもない場合も、日常会話になります。例えば、

男性「雨が降りそうだなあ」

奥様「またかしら。最近、雨が多いわね」

といった具合です。日常会話の場合、会話はあたりさわりのない内容で、早期かつ自然に収束します。

 2.問題解決会話

奥様「傘を持っていった方がいいわよ」

この場合、奥様の関心の対象は「問題」にあります。

相手を気遣っているように見える台詞なので、関心の対象が相手に向けられているようにも思えますが、関心の対象は相手そのものではなく、相手に影響を与える問題(この場合、雨)に向けられています。

そのため、回答は「問題解決策」となります。会話は「どのように問題を解決するか」という視点で、問題の原因追求や解決の方法論に及んでいくことになります。

3.感情移入会話

奥様「雨が心配なの?」

この場合、奥様の関心の対象は「相手そのもの」にあります。

「雨が降ると、何か困ることがあるの?」

「雨が降ったら、大変なの?」

などもこの類いです。

こうした台詞が返ってくると、話を向けられた男性は自分の状況・立場・感情・考えなどを説明することになります。つまり、以降の会話は男性そのものについて展開していくことになるのです。

状況や段階に応じて会話を使い分ける

3つの会話の種類は、どれが優れている/劣っているというものではありません。

状況や場面、あるいは話の段階によって、それぞれに用途があり、いずれも欠かすことのできない会話のパターンです。日常会話も、人間関係の基礎構築に不可欠な重要なやり取りです。(いつも問題解決や感情移入をしていたら、疲れてしまいます。)

大切なことは、この会話の種類を「使い分ける」ことです。

前回お話したコミュニケーション上のトラブルの多くは、状況に適切ではないパターンの会話を繰り返しているがゆえに、会話がお互いに噛み合わず、それゆえ「自己表現」と「他者理解」が成立しない結果として生じるものです。

とりわけ、忙しい職場においては会話の多くが「問題解決会話」で交わされているため、お互いの思考・感情・意思を交流させることができなくなってしまっています。

診察せずに処方する医者

業務上のコミュニケーション・トラブルの代表的な例として、「言った」「言わない」の話が挙げられます。仕事の結果が依頼主の意図と食い違ってしまった場合、「言った」「言わない」の水掛け論が泥沼化していきます。

こうした事態の多くは、早とちりや思い違いによってもたらされるもので、その原因は「問題解決会話」を先行するあまり「感情移入会話」が疎かにされることにあります。

「業務の背景や目的、用途を理解しない」といった言葉で語られることもあります。方法論を先行して話してしまうため、相手がその仕事よって何を得ようとしているのかが置き去りにされてしまうのです。

例えるならば、お医者さんが診察しないで処方箋を書くようなものです。

医者「どうしましたか」

患者「頭が痛いのですが」

医者「とりあえずこの薬を飲んでおいてください」

このように描写すると笑い話のように見えますが、職場ではこれに近い状況がたびたび起こります。

どの薬を処方するかを適切に判断するためには、まずは診察をしなければなりません。相手が今どういう状態にあるのかを、正確に把握する必要があるのです。

仕事においても同じことです。どんな仕事であっても、それをする上では依頼主(上司・先輩・同僚・顧客・取引先)の背景・立場・状況・想いなどを把握しないことには、相手の意図したものを提供することは非常に困難だと言えます。

まず相手の話を聞く

人は他人の話を聞くよりも、自分の話をしたいものです。

そのため、自分がまだ話を言い足りないうちは、相手の話は右から左に流れていってしまいます。それは、自分の話がまだ話し足りないことで頭がいっぱいだからです。したがって、相手が自分の言いたいことを言い尽くすまでは、自分の話は半分も聞いてもらえていないと思った方が良いでしょう。

ところが、毎日忙しい日々を送る私たちは、自分の貴重な時間を優先しようと結論を急ぎ、すぐに「問題解決会話」に移ってしまいます。話の焦点が「どうやってやるか」という方法論に集中してしまうのです。

その結果、早とちりや思い違いが仕事のズレを発生させ、かえって多くの時間をやり直しに捧げなければならなくなってしまう、というわけです。

依頼主の意図通りに仕事をするためには、相手の思考・感情・意図を可能な限り正確に把握する必要があります。

そのためには、相手そのものに焦点をあてた「感情移入会話」を意図的に用いて、相手の言いたいことをしっかりと受け止めなければならないのです。

相手の話を聴き尽くしたら、自分の番が回ってくる

ここで、もう一度コミュニケーションの定義を復習してみましょう。

コミュニケーションとは、

  • 2人以上の人間が
  • お互いの思考・感情・意思を
  • 言語または非言語のメッセージを通じて
  • 伝達し、交流させる行為です。

すなわち、最終的な到達点は、

  • 自分の言いたいことを伝える
  • 相手の言いたいことを受け止める

ことが、お互いに成立している状態を作ることです。

前述のように相手が聞く耳を持たない状況で、どれだけ自分の話をしても、コミュニケーションは成立しません。

自分の言いたいことをちゃんと受け止めてもらうためには、まず徹底的に相手の話を「聴く」ことです。それまでは、自分の言いたいことはグッとこらえます。言葉だけではなく、表情・仕草・動作などにも注目して、相手を観察して理解することに全身全霊を傾けます。

そして、一通り話を聴き終えた後に、相手がしたかったであろう話を、その背景や感情も含めて、自分の言葉で伝え返してみましょう。自分がちゃんと相手の話を理解したということが相手に伝わると、相手は「自分の話をしたい」という想いから解放されます。すると、相手はようやくこちらの話を聴く準備が整います。こちらの番が回ってくるのです。

コミュニケーションを成立させるカギは、まず徹底して『聴く』こと。

そして、相手の話を伝え返すことです。お互いの言いたいことを、お互いに聴き合える会話が日頃からできていれば、トラブルは限りなくゼロに近づいていきます。これは、飲み会や運動会を開催しなくても、通常の仕事の中で十分にできるはずなのです。

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