3. 寿司の不思議
スーパーマーケットで寿司(握り寿司・江戸前寿司を総称して「寿司」とする)を扱う部門は惣菜部門が中心だが、近年は全面的に鮮魚部門へ移管し、より本格的な提供を目指す企業も増えている。
とはいえ現状では、惣菜部門と鮮魚部門の 2部門で寿司を展開 している企業がなお多い。売場が離れている場合、それぞれに特色をつけて販売している——惣菜部門は「価格の安さ」、鮮魚部門は「ネタの鮮度と旨さ」を訴求する形だ。
問題はここにある。2部門が健全に競い合うならまだしも、多くの企業では惣菜バイヤーが過去の売上実績を手放したくない、あるいは鮮魚部門が繁忙期に対応しきれないという 企業内部の都合 で2部門展開が続いている。しかしお客様の立場からすれば、「なぜ寿司が2か所にあるのか?何が違うのか?」という疑問を持つのは当然だ。これは部門間の話し合いで解決できる問題ではなく、 経営者の判断が必要な案件 である。
個人的な見解を述べると、味と品質の観点から寿司は鮮魚部門への一本化が望ましい。ただし条件がある。過去の経験から言えば、鮮魚部門にとって寿司は「ついでの商品」という意識が根強く、品揃え・販売計画・鮮度管理のいずれも粗雑になりがちで、売上に悪影響が出ている事例が多い。鮮魚担当者の意識改革と、できれば 寿司担当を独立させた人員配置 が不可欠である。
2部門で展開する場合にもうひとつ見落とせないのが 温度管理 の問題だ。あるイオン店舗で、惣菜部門の寿司(約15℃管理)と鮮魚部門の寿司(約2℃管理)が隣り合わせに陳列されていた事例がある。これはイオンだけの話ではなく、業界全体でほぼ例外なく部門間の温度管理基準に乖離がある。惣菜部門はシャリの硬化を防ぎたい、鮮魚部門はネタの鮮度を守りたい——それぞれの言い分はわかるが、 同一企業内で寿司の温度基準が統一されていない のは、品質管理の観点から問題だ。
販売期限も惣菜部門は6〜8時間単位、鮮魚部門は1日単位としている企業が多い。温度差があるのだから当然とも言えるが、鮮魚部門の寿司が長時間経過後にシャリが硬くなって美味しくない、という本末転倒な状況が起きている。近年は回転寿司チェーンや宅配寿司(フードデリバリー経由)との競合も激化しており、スーパーマーケットの寿司が品質で劣っては顧客離れを招く。温度基準と販売期限の社内統一を、そろそろ検討すべき時期に来ている。
