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第3回:「駆け込み需要」は本当に毎回起きるのか?――2014年と2019年を比べる

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記事のポイント

  • 2014年の増税(5%→8%)では、直前週にスーパー全店売上が前年比+23%、直後週に▲25%という大きな山と谷が観測された
  • 2019年の増税(8%→10%、軽減税率導入)では、飲食料品の伸びは+5〜8%程度にとどまり、日用品等の+30%超と比べて駆け込みが大幅に抑制された
  • 2027年の「8%→1%減税」は増税とは逆の力学が働く可能性があり、過去の増税対応ノウハウがそのまま通用するとは限らない

2014年の消費税率引き上げ(5%→8%)では、増税直前週(2014年3月最終週)にスーパー全店の売上高が前年同期比+23%まで伸び、増税直後週(4月第1週)には反動で▲25%まで落ち込んだことが、民間分析会社のPOSデータ分析で確認されています。約2週間で48ポイントもの振れ幅があったことになり、この時期は発注・在庫・人員配置のすべてが大きく揺さぶられたはずです。

しかし2019年の引き上げ(8%→10%、軽減税率導入)では様相が異なりました。軽減税率の対象となった飲食料品の売上伸長率は+5〜8%程度にとどまった一方、標準税率10%となった日用品等は+30%超の伸びを見せています。この違いを生んだのは、税率据え置きの有無です。2014年はすべての税率が一律で引き上げられたため、備蓄可能な食品全般にまで駆け込み購入が広がりましたが、2019年は飲食料品の税率が据え置かれたため、食品・飲料に対する駆け込みのインセンティブがほとんど働かなかったのです。つまり「増税前は必ず駆け込みが起きる」という経験則は、税率の上げ方次第で成立したりしなかったりする、条件付きの現象だったことになります。

この構図を踏まえると、2027年の「8%→1%減税」では、これまでとは逆の現象が起きる可能性があります。対象となるのは、生鮮品や即食性の高い惣菜・弁当のように日々の購買行動でしか買えない商品ではなく、保存のきく加工食品(調味料・缶詰・乾麺・冷凍食品等)です。これらのカテゴリーで、3月中旬から下旬にかけて購入を4月以降へ先送りする「買い控え」が一部で発生し、4月1日以降は減税のお得感と買い控えの反動が重なって、一時的な需要集中が生じるリスクがあります。過去の増税時とは、山と谷の順序そのものが逆転する可能性がある点が重要です。

これまで積み上げてきた「駆け込み対応」のノウハウは、主に増税直前の欠品対策や、増税直後の在庫過多対策として磨かれてきたはずです。しかし今回想定されるのは、直前の需要減(買い控え)と、直後の需要急増という、これまでとは逆向きの波です。発注のタイミングや応援人員の配置計画を、過去のパターンをそのまま裏返して当てはめるだけで十分か、慎重に見極める必要があります。

もうひとつ気になるのは、2019年の軽減税率導入時、駆け込みがほとんど起きなかった理由です。対象品目が据え置かれたことに加え、消費者側にも「食品は税率が変わらない」という認識が浸透していたことが背景にあると考えられます。今回は逆に「食品の税率が大きく下がる」という、これまでにない情報が消費者に届きます。制度への理解度が需要行動にどう影響するかという点でも、過去の2つの事例とは異なる展開になる可能性があります。

長年「増税前は駆け込み、増税後は反動減」という前提で組んできた販促・発注計画は、今回のように山と谷の順序が入れ替わる局面では通用しません。加工食品と生鮮・惣菜とでは、2027年3月下旬から4月上旬にかけて組むべき発注計画がまったく違ってきます。

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